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2007/06/02

【コラム】慚愧

松岡農相の自殺について、安倍首相が「慚愧に堪えない」と発言していた。既にマスコミやネットなどで話題になっている通り「慚愧に堪えない」とは「自分の言動を反省して恥ずかしく思うこと」(大辞林)を意味する。おそらく彼は「残念」を難しく言い換えようとしたのだろうが、巷ではいろいろな深読みもされているようだ。

ともあれ、政治家の皆さんは「権威のある言葉」が好きらしい。同じ概念を表す言葉なら、彼らは「より難しそうな言葉」「より頭の良さそうな言葉」「より皆が知らなさそうな言葉」を選択するような気がしている。

例えば、戦前教育の影響下にある政治家の皆さんは、いわゆる漢籍(中国人が漢文で書いた書物)からの引用を好んだ。例えば小泉前首相の座右の銘は「無信不立(信無くば立たず)」で、これは論語の一節だ(実は彼、戦後に教育を受けた世代なのだけど)。いっぽう戦後生まれの政治家の皆さんは、それに加えて英語由来のカタカナ語を好むようになった。安倍首相の所信表明演説で、イノベーション(技術革新)などのカタカナ語が多数登場したことも、そういうことなのだと思う。

もう随分前のことだが、漫画家の倉田真由美さんが「だめんず・うぉ〜か〜」の中で、次のような指摘をしていた。「人は往々にして、文章の背後に“本当に伝えたい情報”を隠すのだ」と。

その回の具体的内容は失念したので、私なりに実例を考えてみた。例えばある女性が「昨日さぁ、IT系企業のCEO(最高経営責任者)をやってる知り合いと会ったんだけど、最近はあの業界も景気良くないらしいよ」という発言をした場合。この文章の要約は、本来「最近のIT業界は景気が良くない」となるのだが、真の要約は「私はCEOと友達だ」となるのだそうだ。彼女が本当に伝えたい情報はそういうことなのだと。これに即して邪推するならば、安倍発言の真の要約は「私は慚愧という言葉を知っています」となるか?

その彼女が「IP企業のCEOと……」なんて言ったら笑いものだろう。身の丈にあった言葉選びって、実に大切なことなのだと思う。

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