【コラム】ガンマバージョン
YouTubeに対するアクセス遮断問題(CNET Japanなどを参照)のためにサービスを停止していた『ニコニコ動画』(ニワンゴ)が、近日中にサービスを再開すること発表した。この再開サービスについてニコニコ動画では「クローズドガンマサービス」という表現を用いている。
このうち「クローズド」とは限定会員向けのサービスという意味(それでも10万人のテスターを募るというが)。そして一方の「ガンマ(γ)サービス」は、おそらく「ベータ(β)サービス」から着想を得た用語なのだろう。既に一般化していてもおかしくない表現ではあるが、妙に新鮮な感じだ。念のため少しググって調べてみたが、一部ウェブサービスでγバージョン・γ版・γサービスといった表現が登場しているものの、その数はαやβほど多くはない(ただしこれは日本語での話だ)。
ソフトウェア開発の現場では、開発の段階を表す言葉として「αバージョン」「βバージョン」という用語をよく用いる。厳密な定義があるわけではないが、開発初期にテスト用・機能評価用として確定させるバージョンのことをαバージョン、リリース直前段階に最終テストのために確定させるバージョンのことをβバージョンと呼ぶ。
ところがウェブサービスの世界では「永遠のβ」という考え方がある。つまり「機能が完全に確定していない状態でも、とりあえずサービスを開始してしまい、ユーザーからの要望などを反映しながらサービスを継続する」という考え方だ。その方がネット特有のスピード感やダイナミズムにうまく追随できる。よく知られるところでは、あの『mixi』が現在でも「ベータ版」と言い張っている。これは旧来的なコンピューター業界人にとって、随分ショッキングな概念に映っているに違いない(旧聞ながら、YouTubeに「もしもプログラマーが飛行機を作ったら」という動画がアップされているので、時間のある方は見ていただきたい)。
翻って、ニコニコ動画が用いた「ガンマサービス」(γバージョン・γ版・γサービス)という表現は、非常に象徴的に思える。「永遠のβ版のつもりで開始したサービスが、不測の(?)事態でストップしてしまった。再開後のサービスはβ版とは大きく異なる仕様だ。さて、この新サービスを何と呼ぶのだろう?」と、おそらくそんな議論が交わされたのではないか。こういう議論は、モノがネット上のサービスでなければ起こりえない。
ひょっとしたら、日本のウェブサービスの世界では、今後「デルタ」「イプシロン」「ゼータ」などのギリシャ文字が消費されることになるかも知れない。かつて、バグだらけのソフトウエアのβ版が、ver 0.99999999……999bと、その桁数を増やしていったような感覚で。
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