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2006/04/27

【コラム】ヌーサン

先日、NHKで「立花隆が探る サイボーグの衝撃」とかいう番組をチラ見した。番組の内容・構成に関しては、巷間で色々と物議を醸し出しているらしいが、それはひとまず置いておいて。この番組に立花氏の対談相手として出演されていた押井守氏の発言に、筆者は大きく共感したのだ。曰く「人類は既にサイボーグなのだ」と。

私たちがサイボーグといってイメージするのは、手の部分がロボットに置き換わった装置だったり、脳とコンピューターとを直結するインターフェースだったりするのだけど(番組ではそういう類のテクノロジーがすでに現実のものと
して紹介されており、それ自体に驚かされるのだけど)、実は、身体機能の拡張という意味での「原始的なサイボーグ状態」は、もうほんっとに古い昔から実現している。

つまり、人類が服を着るようになり、メガネをかけるようになり、入れ歯を利用するようになり、義手や義足を用いるようになり、骨をボルトで締めるようになり、ペースメーカーを入れるようになった時点で、すでに人類のサイボーグ化は進んでいるのだ。あるいは化粧を超えて、鼻に注射をしたりシリコンを詰めたりする行為もサイボーグ化。薬やサプリメントの利用は、まるでアラレちゃんがロボビタンAを補給する行為にそっくりだし。もっというと私たちが日常的に使用している「外部装置」の数々だって、つまり、靴や自転車や自動車だって、あるいは紙やテレビやコンピューターや携帯電話だって、ある意味でサイボーグ化だと考えられるわけだ。

……などという大言壮語の後になんだけど、本題はサンダルとブラジャーとカツラとコンタクトレンズの話。

ある会社がヌードサンダルなる商品を売り出していることを知った。略してヌーサン。かつてストラップのないシリコン製のブラジャー「ヌーブラ」が大流行したことがあったが、そのサンダル版といった感じの商品だ。すなわちヌーサン(まさに靴底の形をしている)を足裏に粘着させることで、裸足のような見栄えを作りながら、足裏を保護するという商品なのだという。女の人なんかは、ストラップによる日焼け跡ができないし、アンクレットやトゥーリングなんかのアクセサリーも見栄えが良くなるだろう。

本来、ヌーサンにしてもヌーブラにしても「実用」という側面で考えると不便な部分の多い商品なのだと思う。乳房の保護という観点ではヌーブラよりもブラジャーの方が優れた機能を持つと思うし、靴としての性能を考えるとヌーサンよりもサンダルの方が優れているのだとも思う。

でも人間の美的欲求って、時としてそういう価値観に勝ってしまうことがあるのだ。例えば、メガネを捨ててコンタクトレンズを使い始めた人の気分って、こんなんじゃなかったかと思うのだ。カツラの不自然さを嫌って、ややメンテナンスの面倒なプロピア(皮膚に吸着させる人工頭髪)を利用しはじめる男の気分も、これに似た感じのものだろう(思えばプロピアのコピーは「ヘアコンタクト」なのだった。これは頭に装着するコンタクトという意味らしい)。「人の本質は見栄えではない」と理念的社会は叫んでいるけど、どっこい本音の部分では、その理念に抗っているのが人間というヤツだと思う。嗚呼、悲しき人間の業。

押井守氏はこう言う。サイボーグ化が進んで、それこそ脳以外の全ての部分が機械やコンピューターで置き換わるかも知れない未来において、人間が人間たり得る本質は「その人の記憶」に尽きるではないか?と。私自身はこの問いに関して明確なビジョンを持っていないが、ヌーサンのような商品を欲する人間の業を見るにつけ、「モノとしての身体」にこだわる人間の感覚は、わりと長い未来にまで残り続けるのではないかと想像しているところだ。もっとも、それさえも覆るような価値観が登場するのなら、それはそれで面白いのかも知れないけど。生きているうちにそれを確認できることは、ないんだろうなぁ。いや、あるのかな?

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